砂ろ過とフィルトマットの違い

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代表的なろ過装置である「砂ろ過(急速砂ろ過)」と「フィルトマット」の違いについて解説します。

フィルトマットには大きく分けて特徴の異なる「スポット吸引洗浄タイプ」とより高精度な「スレッド式」があるため、両方を比較していきます。

古い砂ろ過設備の更新を検討されている場合

古い砂ろ過設備の老朽化に伴う更新時、フィルトマットについてもご検討いただきたいと思います。
古い設備を補修して使い延命しても、いずれ限界が来ます。
最新のフィルトマットの導入により、省スペースながら、手間の掛からない効率的な運用が可能になります。

砂ろ過からフィルトマットに置換えを行なった事例

  • 化学業界
  • S型
京浜工業地帯の化学工場における工業用水のろ過、砂ろ過の代替

砂ろ過設備の代替として、珪藻類を大量に含む工業用水のろ過設備として設置

  • 自動車業界
  • M100型
自動車工場における用水のろ過、砂ろ過の代替

自動車工場における工業用水ろ過工程回収率向上のため、大量の洗浄排水を出す砂ろ過の代替として設置

  • 製紙業界
  • OME型
製紙工場のマシン用水として使用するための凝集沈殿上澄水のろ過、砂ろ過処理の代替

製紙工場M/C用清水として使用するため砂ろ過処理の代替として設置

ろ過精度の違い

砂ろ過の精度

砂ろ過の場合、フィルトマットとは異なり目開きというものが無いため純粋な比較は困難ですが、単層式砂ろ過の場合20~50ミクロン程と見られています。

一般的に砂ろ過は積層ろ過効果により濁度低減に一定の有効性が認められ、設備によっては5ミクロン程度までろ過精度が高まる場合もありますが、ろ過精度は均一ではなく、ろ過砂や原水の状態により変動します。

フィルトマットの精度(スポット吸引洗浄タイプの場合)

スポット洗浄タイプでは、強力な洗浄力によりSS(夾雑物)のろ過を安定した精度で提供します。

最小目開き10ミクロンの高精度ろ過から、3,500ミクロンの粗いろ過までバリエーションが豊富です。

砂ろ過と異なり、基本的にろ過精度は時間経過に対し一定です。ただし、フィルトマットはSS除去装置であるため、砂ろ過との置き換えでは、原水の性状と得たいろ過水質を十分に確認してから検討する必要があります。

フィルトマットの精度(スレッド式の場合)

スレッド式では、最小目幅2ミクロンから20ミクロンまでの高精度なろ過を安定して提供します。
こちらも砂ろ過と異なり、ろ過精度は時間経過に対し基本的に一定となり、濁度低減にも効果があります。

洗浄時間の違い

砂ろ過の洗浄時間

数分~15分程度のものから最長で1時間程要するものまで、機種、また処理能力の差によって大きく変わります。

また、逆洗中はろ過が停止されます。

フィルトマットの洗浄時間(スポット吸引洗浄タイプの場合)

10数秒~最大数十秒、通常の自動洗浄時はろ過を停止せずに洗浄可能です。

フィルトマットの洗浄時間(スレッド式の場合)

10分~15分程度と短時間で洗浄可能ですが、洗浄時はろ過を停止します。

メンテナンスの違い

砂ろ過のメンテナンス

定期的なろ過砂の補充や交換を行なう必要があります。

フィルトマットのメンテナンス

水質と目開きがマッチすればスクリーンについてはほぼノーメンテナンス。
実際に、スクリーンを何年も交換せずに安定運用しているお客様が多数居ます。
*1年毎の定期開放点検を推奨しています。

設置の違い

砂ろ過の設置

砂ろ過の場合、設置面積が非常に大きい、重量があり基礎工事が必要、また、洗浄水タンクおよび後段にポンプが必要、工事コストが高いという側面があります。増設したくてもスペースの問題から容易に増設ができないケースも。

フィルトマットの設置

フィルトマットは省スペース設計で、フランジ接続で配管の一部として設置可能。
ろ過装置を増設したいがスペースが無いというシーンで「これなら入る」と選ばれることが度々あります。

回収率の違い

回収率とは、ろ過装置に流入した原水量を100とした場合、得られるろ過水量を%で表示した数値になります。
回収率が高いほど、得られるろ過水量が多く洗浄排水量が少ないため、全般的にランニングコストが低くなります。また、洗浄排水量が少ないことから環境面でも優位性があると言えます。

砂ろ過の回収率

砂ろ過の場合、一般的に90%前後の値になります。
1日に1回の定期洗浄を行うケースが多いのですが、流入原水の性状が変化すると1日に数回の洗浄を実施することもあり、その場合の回収率は90%を下回ることがあります。

フィルトマットの回収率

通常90%後半の値となり、回収率が高いことが特徴です。
ある大手自動車工場の事例では、1日の洗浄排水量が54㎥に達する砂ろ過をフィルトマットに置き換えて頂き、洗浄排水量を80%ほど削減した事例もございます。

洗浄排水量の違い

洗浄排水量は、環境問題とコスト面の2つの観点から重要視される指標です。

洗浄排水量が多いろ過装置では水の利用効率が下がり、下水道利用料・排水処理コストの増加や、水の再利用率が低下することで上水道の利用料の増加等、様々なマイナス影響を与えます。
また、工業用水は契約後に利用量を変更することができず、超過すると数倍の割高な利用料が掛かります。

そうした背景より、近年ろ過装置による水の再利用率の向上がテーマとして挙げられることが増えてきました。

砂ろ過の洗浄排水量

ろ過装置の規模が大きくなれば、それに応じて洗浄排水量も多くなります。

フィルトマットの洗浄排水量

フィルトマットは国土の2/3が乾燥地帯であるイスラエルで、少排水を非常に重要視して開発されたろ過装置のため、極めて少ない排水量で高効率な洗浄を行なうことが可能です。

前処理の違い

砂ろ過の前処理

砂ろ過の前処理として、凝集剤を用いてフロックを形成し、沈殿処理を行ない除去します。
凝集剤には硫酸バンド、PACと呼ばれるポリ塩化アルミニウム、高分子凝集剤などが主に用いられています。薬品を使用することにより高いろ過精度を実現しますが、薬品の注入操作・制御の手間、薬品自体のランニングコスト、および薬品を含む排水処理コストなどに想定以上の費用と手間が掛かることもあります。

フィルトマットの前処理

凝集剤などの薬剤は一切不要で、高精度なろ過を実現します。

まとめ

砂ろ過の全てがフィルトマットに置換えできるわけではありませんが、様々なシーンで代替・併用可能であり、その際のメリットは非常に大きいと言えます。
水処理設備の更新や新設時に、イニシャルコストも維持管理コストも高価な設備を導入する前に、一度フィルトマットをご検討ください。

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