砂ろ過とは
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砂ろ過(すなろか)とは、砂をろ材としたろ過の方式です。
飲料水の製造や工業用水など様々な所で用いられています。
砂ろ過とはろ材に砂を用いたろ過設備のことで、主に緩速ろ過と急速ろ過などに代表される異なる2種類のろ過方式があります。
緩速ろ過は流束を低くしてゆっくりとろ過を行うため、表層に生成される生物膜の作用でろ過効果を高め、急速ろ過は前段に注入するPAC、凝集剤などに代表される水処理薬品で形成されるフロックを高流束でろ過して、固形異物や濁質を取り除くものです。
緩速ろ過
緩速ろ過とは
緩速ろ過は、ろ過砂の表層に形成される生物膜の作用を利用してろ過する方式で、非常にゆっくりとした速度でろ過していくものです。
生物膜はゼラチン状で、濁りの原因物質だけでなく様々な異物が付着します。
緩速ろ過の洗浄
緩速ろ過は砂層表面の生物膜に微粒子(=汚れ)が堆積していくため、定期的に堆積した汚れの除去が必要です。
緩速ろ過は表層に堆積した汚れを掻きとることで洗浄しますが、その際に生物膜を破壊してしまうため計画的な保守が必要です。
緩速ろ過のメリット
- 微生物の作用により水溶性有機物、アンモニア等も低減することができる
- 水処理薬品を前段に用いないため、飲料水では「ろ過水が美味しい」と言われる
緩速ろ過のデメリット
- 高濃度の原水には対応できず、閉塞してしまう
- 面積に対し得られるろ過水が少ないため、ろ過池に広大な面積が必要
- 定期的に実施する必要のある表層掻きとり作業により生物膜も破壊してしまうため、再生に時間を要する
急速ろ過
急速ろ過は、凝集沈殿処理をした水を砂の層に通し、砂層全体で濁質を除去していく方法です。非常に速い速度でろ過を行うため、大量のろ過水を得ることが出来ます。
急速ろ過の仕組み
前処理に薬剤を使うことで水中に浮遊する微細な粒子を凝集させ、大きな塊(フロック)にします。
それを沈殿により予め取り除いておくことで、原水が砂層に到達する前に濁質を軽減させ、閉塞が起こりにくい安定したろ過を提供します。
急速ろ過では砂の層全体がフィルターとなり、前段で取り除けなかったフロックをろ過します。
ろ過砂のサイズは0.5mm前後のものが用いられますが、砂表面に付着する作用、砂と砂の間に沈殿する作用により濁質を除去します。
急速ろ過の洗浄
上述のとおり急速ろ過はろ過砂にフロック(=汚れ)が蓄積していきます。
汚れの蓄積が進むとろ過品質は低下し、限界を超えると目詰まりし、ろ過水の供給が止まってしまいます。
そのため、状況を観測しながら定期的にろ過砂に付着した汚れを除去する必要があります。
急速ろ過はろ過砂層全体がフィルターとなるという性質から、緩速ろ過と異なり砂層全体に汚れが蓄積していきます。
そのため、主に「逆洗浄」という方法で砂全体を洗浄し、ろ過性能を再生させます。
逆洗浄は、通常ろ過を行なう方向とは逆の方向に向けて水流を流し、付着・堆積した汚れを洗浄し、排水します。
この逆洗浄を行なう間はろ過を行なうことができませんので、ろ過水の供給を停止するか、又は別の処理系統に切り替えて、別ラインでろ過を継続することになります。
急速ろ過設備の種類
ろ過砂の構造による分類
ろ材が単一素材のろ過砂である「単層砂ろ過」と、複数種類のろ材を用いる「複層砂ろ過」の2種類があります。
複層砂ろ過には、二層式砂ろ過、三層式砂ろ過等があり、主にろ過砂に加え、比重が軽いアンスラサイト等を用いることでより高いろ過効果を実現します。
単層砂ろ過の場合、どうしても表層近くにろ過した汚れが集中しがちで、効率的な深層ろ過を行なうことが難しいという面がありますが、複層砂ろ過の場合はその課題を軽減するだけでなくコストは上がりますが、より目的に合致したろ過効果を得ることが出来ます。
設備の種類による分類
ろ過池
ろ過池を用意し急速ろ過を行ないます。主に浄水場等で用いられます。
砂ろ過装置(サンドフィルター)
ろ過器・ろ過装置の中にろ過砂を充填し、ろ過を行ないます。
工業用としては主流の砂ろ過設備で、重力式と圧力式があります。
砂ろ過装置の価格は機種によって様々ですが、イニシャルコストだけでなく運用コストや必要な人員数などを総合して十分に比較することをお勧めいたします。
理由は下記にて解説いたします。
砂ろ過の課題
砂ろ過は伝統的なろ過の手法ですが、デメリットもあります。
1. 逆洗時、給水が停止される
急速ろ過はろ材表面に汚れが蓄積されるため、定期的に逆洗を行ない洗浄します。その際、逆洗にはそれなりの時間を要しますが、その間ろ過による給水は停止されることになります。
2. ろ過砂の摩耗
ろ過砂は、砂同士がぶつかり合うことで摩耗します。特に逆洗を繰り返し行なう中でどうしても粒が小さくなり摩耗していきます。
結果、摩耗して小さくなったろ過砂がろ過水側に流出したり、ろ過性能に変動が起こるため、ろ材の継続的な補給や、総入れ替えを定期的に要します。
ろ過砂の処理には産業廃棄物として処理コストが掛かるため、これも維持管理コストの負担要因になっています。
3. 設備に要する面積が大きい
工場においては、跡から設備を増設しようとしても、設置面積の大きさから導入が困難な場合があります。
4. 設備が重く、基礎工事を要する
こちらも増強の際に導入するには基礎工事が必要となり、既設の設備を稼働させながらの工事は困難なケースがあります。昨今の「耐震化」の面でも課題になります。
5. 運用にスキルを要する
砂ろ過の運用には、状況を見てろ過砂のメンテナンスを行なう等、運用スキルが必要です。
昨今の傾向としては、省人化が加速し、水処理技術の承継断絶などもあり、水処理設備の運用は今後ますます自動化、省人化が進むものと思われます。
まとめ
- 砂ろ過は主要なろ過設備
- 現在は急速ろ過が主流
- 砂ろ過は設備が大きく重いため耐震化の妨げになることがある
砂ろ過はろ過装置の主要設備であり、古くは浄水場における緩速ろ過、現在は急速ろ過が主流です。
それぞれろ材は砂であっても、ろ過の方式は全く異なるものです。
現在主流である急速ろ過には逆洗機能を搭載した専用の装置も多くありますが、設備が大きく重いことが課題で、耐震化を進める上での障壁にもなっています。
砂ろ過で失敗しないために
フィルトマットが登場する以前は、オートストレーナよりも高精度なろ過を行いたい場合は実質的に砂ろ過に限られていましたが、現在では砂ろ過より省スペース、メンテナンス負荷が低いフィルトマットの登場により、置換えできるシーンが数多くあります。
既設砂ろ過設備の更新や増設が困難なケース、オーバースペックなことがわかっていながらやむを得ず砂ろ過を使っており、設備更新のタイミングが近づいている事業者様など、砂ろ過以外の可能性を一緒に探ってみませんか?日本を代表する世界的企業の国内工場においても砂ろ過からフィルトマットに置換えされ、安定運用されています。
お気軽にご相談いただけましたら幸いです。
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