熱交換器の水処理
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熱交換器を安定稼働させるには、水処理の設計と運用が欠かせません。
本記事では、水処理の重要性を整理したうえで、ケース別の対策方法とおすすめのろ過装置をご紹介します。
熱交換器とは
熱交換器とは、温度の異なる2つの流体(液体・気体)間で熱を移動させる装置です。
流体同士を混ぜることなく、熱だけを効率的に交換できるため、冷却・加熱・熱回収などさまざまな用途で使用されています。
具体的には、工場の製造設備をはじめ、ビルの空調設備や冷却設備などでも活用されています。
熱交換器は内部に水が流れる構造のため、水質や異物の影響を受けやすく、汚れや詰まりが発生すると伝熱効率の低下や運転トラブルにつながる恐れがあります。
そのため、熱交換器を安定稼働させるには、機器そのものの管理に加え、冷却水や原水を含めた水処理の設計・運用が重要です。
熱交換器トラブルを防ぐために水処理が必要な背景
熱交換器の伝熱低下や故障などのトラブルは、使用している水の性質や運用条件が原因となるケースも少なくありません。
ここでは、熱交換器の稼働に影響を与える要因をケース別に整理し、それぞれの背景を解説します。
開放循環式冷却水を使用している
開放循環式冷却水とは、冷却水を循環して再利用しながら、冷却塔(クーリングタワー)で外気に直接触れることで温度を下げる方式です。
効率的に冷却できる一方で、外部環境の影響を受けやすい特徴があります。
開放循環式冷却水で水質が悪化する主な要因として、以下の3つが挙げられます。
水質悪化要因1 外部から循環水に侵入する異物
空気中の砂塵や微細な固形物などが混入することで、熱交換器の流路で詰まりや堆積を引き起こす場合があります。
水質悪化要因2 スケールや腐食生成物
蒸発による濃縮や水温変化の影響でカルシウム・シリカなどが析出し、スケールとして付着することがあります。
また、配管や機器の腐食によってサビが発生し、汚れの原因になるケースもあります。
水質悪化要因3 微生物の増殖
細菌や藻類などが増えると粘性のある物質が発生し、スライム障害に繋がることがあります。
このように開放循環式冷却水は、水質が悪化しやすい条件が揃いやすいため、適切な水処理が重要です。
冷却水の原水に河川水を使用している
冷却水の原水として河川水を利用している場合、水道水と比べて水質のばらつきが大きく、熱交換器トラブルの要因となる場合があります。
そのため、原水の特性を理解したうえで運用することが重要です。
河川水を使用する場合は、地下水に比べて夾雑物が多く、大小さまざまな粗ゴミが混入しやすい傾向があります。
また河川水は、工事や放水、降雨などの影響で水質が変動しやすく、微生物や藻類の増加によって粘性・絡みつきが発生することもあります。
このように河川水を原水として使用する場合は、原水に含まれる固形異物(夾雑物)や成分によって水質が悪化しやすく、結果として熱交換器の詰まりや性能低下につながる恐れがあるため、注意が必要です。
スケールが析出しやすい水質
熱交換器のトラブル要因として代表的なのが、配管や熱交換面に固形物が付着する「スケール」です。
スケールとは、水中に溶け込んでいる成分が析出し、固形物として表面に付着・蓄積したものを指します。
冷却水は設備の熱を受けて温度変化を繰り返し、冷却塔を使用している場合は蒸発により水が濃縮されるため、水中成分のバランスが崩れやすくなります。
その結果、カルシウムやシリカなどの成分が析出し、スケールとして熱交換器内部に付着することがあります。
スケールが付着すると、熱交換器の伝熱が妨げられ、冷却能力の低下や運転効率の悪化につながります。
また付着物が厚くなるほど影響は大きくなり、洗浄頻度の増加や安定稼働の妨げになるケースもあります。
このように、スケールが析出しやすい水質条件では、熱交換器の性能低下につながるリスクが高まることがあるため、注意が必要です。
配管・機器の腐食(サビ)起点で詰まりが起きる
熱交換器の詰まりや性能低下は、外部由来の異物だけでなく、配管や機器の内部で発生した汚れが原因となる場合もあります。
中でも多いのが、配管や機器の腐食によって生じるサビです。
循環水を扱う設備では、使用条件や水質の影響によって配管や機器の腐食が進行し、金属表面からサビが剥がれて水中に混ざることがあります。
これらのサビは、粒子状の固形物として循環水に含まれ続けるため、配管内で堆積したり、熱交換器内部の流路に引っかかったりすることで詰まりの原因になります。
また、サビは単体で堆積するだけでなく、他の汚れと絡み合うことで付着が進みやすくなることもあります。
その結果、運転上のトラブルにつながるケースも少なくありません。
このように腐食(サビ)が発生しやすい環境では、目詰まりや性能低下のリスクが高まりやすいため注意が必要です。
微生物が増えやすい環境
熱交換器のトラブルは、水中の微生物が関係して発生する場合もあります。
冷却水などの循環水は、水温や栄養分、滞留部の有無といった条件によって、微生物が増殖しやすくなることがあります。
水中の細菌・藻類などが増殖すると、配管や熱交換器の内部に粘性のある付着物が形成されることがあります。
こうした付着物は一般的にスライム(バイオフィルム)と呼ばれ、流路を狭めて詰まりの原因となったり、熱交換面を覆って伝熱を阻害したりすることがあります。
また、スライムは異物やサビなどを絡め取りやすく、汚れが蓄積しやすい状態をつくる点にも注意が必要です。
その結果、差圧の上昇や冷却能力の低下など、熱交換器の安定稼働に影響を与えるケースがあります。
このように微生物が増えやすい環境では、目に見えにくい形で汚れが蓄積しやすく、熱交換器トラブルに繋がる恐れがあります。
熱交換器の水処理方法
熱交換器のトラブルを防ぐには、原因となる汚れや水質の課題に応じて、適切な水処理方法を選ぶことが重要です。
ここでは、熱交換器の安定稼働に向けて活用される代表的な水処理方法として、ろ過装置と薬品について解説いたします。
ろ過装置
ろ過装置は、水処理において水中に含まれる固形異物(夾雑物)を取り除くための装置です。
熱交換器まわりの水処理では、物理的に異物を除去する役割を担います。
冷却水や原水には、砂・泥・サビなどの固形物が混入・発生することがあり、これらが循環水中に蓄積すると、配管内や熱交換器内部で堆積や詰まりを引き起こす原因になります。
ろ過装置を活用することで、こうした異物が設備内部に溜まりにくくなり、熱交換器の差圧上昇や伝熱低下といったトラブルの低減につながります。
また、ろ過装置は微生物そのものを直接殺菌するものではありませんが、微生物が付着・増殖する足場となる汚れを減らすことで、スライム(バイオフィルム)が発生しにくい環境をつくる効果も期待できます。
このようにろ過装置は、熱交換器を安定稼働させるうえで、異物の除去・堆積や詰まりの低減、スライム抑制の補助といった観点から重要な役割を果たします。
薬品
熱交換器まわりの水処理では、薬品を用いて水質を調整し、トラブルの発生要因を抑える方法もあります。
具体的には、スケールの付着や腐食の進行を抑えたり、微生物の増殖を抑制したりする目的で使用されます。
ろ過装置が固形異物を物理的に除去するのに対し、薬品は水中成分や環境をコントロールする手段として用いられます。
熱交換器を安定稼働させるためには、現場の水質や運用条件に応じて、薬品とろ過装置を適切に組み合わせて運用することも重要です。
ケース別のお勧めろ過装置
水処理をより効果的に行うためには、現場の水質や異物の種類に合ったろ過装置を選定することが重要です。
ここでは代表的なケースを取り上げ、熱交換器の安定稼働に向けておすすめのろ過装置を紹介します。
開放循環のような異物が多いケース
開放循環では水質の変動や異物の発生要因が多く、硬質な固形異物だけでなく、スライム状の粘性のある汚れや珪藻類など「絡みつきやすい汚れ」が問題になることがあります。
そのため、開放循環の冷却水ろ過では、幅広い異物に対応できる洗浄機能の強い自動洗浄タイプのろ過装置が適しています。
中でも、飛来異物からスケール・腐食生成物・スライム障害まで幅広く対応できるろ過装置としておすすめなのが、フィルトマットスポット吸引洗浄タイプです。
お勧めのろ過装置
配管内のサビ・シリカ成分・砂・珪藻類等の異物を除去できます。
熱交換器や各種プロセス設備の目詰まり防止に適しており、豊富なラインナップで、適した機種を選択いただけます。

河川水を冷却水に使用するケース
河川水を原水として使用する際、原水由来の異物が設備へ流入すると、堆積や目詰まりの原因となり得ます。
そのため、熱交換器を保護するうえでも異物の除去が重要になります。
河川水のろ過に適しているのは、フィルトマットスポット吸引洗浄タイプです。
夾雑物が多く、水質が変動することもある河川水は、オートストレーナでは詰まりが発生することがあります。
そのため安定的な稼働には、強力なスポット吸引で目詰まりしにくいフィルトマットがおすすめです。
お勧めのろ過装置
オートストレーナの欠点をクリアした、長期安定運用が可能なろ過装置です。
河川水の水質にも対応し大流量処理にも最適。

密閉式冷却塔を使用しているケース
密閉式冷却塔は、冷却水が外気に直接触れない構造のため、開放式に比べて異物の混入が少ないといえます。
しかしその一方で、冷却水が循環する過程において、スケールの析出や配管・機器の腐食(サビ)、微生物の増殖といった問題が発生する可能性は十分にあります。
このような背景から、密閉式冷却塔においてもろ過装置は重要な設備です。
密閉式冷却塔では、補給数コストの抑制や薬品との併用も考慮した、排水量の少ないろ過装置が有効です。
フィルトマットシリーズ最小の洗浄排水量に加えて、設置スペースも抑制できます。
お勧めのろ過装置
洗浄排水量が少なく、省スペースなろ過装置です。
自動洗浄機能を備えており、長期的な安定運用が可能です。

まとめ
熱交換器は使用している水の性質や異物の影響を受けやすく、スケール・腐食生成物・微生物などが原因となって、詰まりや伝熱低下といったトラブルにつながることがあります。
特に開放循環式冷却水や河川水・井戸水を利用している場合は、水質が悪化しやすいため注意が必要です。
ろ過装置は、異物の除去や堆積・詰まりの低減に有効であり、現場の条件に合った選定が重要になります。
冷却水ろ過や熱交換器トラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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